野球スコアブックアプリ誕生秘話 第7話「合同会社クラウドプロダクション設立」

野球スコアブックのアプリの提案、それの資金出資を募り、御世話になった三軒茶屋の社長にプレゼン。

その条件が、社長がオーナーとなる会社とは別立てで、「会社の設立」であった。

 

当初、法人設立をどうしても避けたいと思い、社長の会社の中で、一部署やらせてもらおうとしたり、Hを社長にしたてようとしたり、ココでも逃げ根性が働いて画策していたぐらいだった。(結果、社長からもHからも断られるのだが…。)

 

では、何故、「法人設立を避けたかったのか?」

それは、私の幼少期から青年期にかけて、父が事業に失敗して負の側面を経験しているからに他ならない。

 

父が事業に失敗(本当は執筆時2017年現在でも休業中という表現が正しいが)した当時は、家の中は、裸電球1個のみの薄暗い室内で、とにかく暗かった。

負の感情を家庭内に持ち込み、その雰囲気を醸し出す父に対し、青年期の私は、仕事は不安定な事をすべきではない、お金がかかるような無駄なことをしてはならない、という様に感じ取っていた。

未知へのチャレンジは、きっと自分の心の中、想像の中だけで許される世界なのだろうと心の中に止めていた。だから、後に音楽と出会ってからは「理想を音に表現することが許される音楽の世界」にハマったのだと思う。

 

祖父祖母が農家で、野菜だけはあったが、今でも脳内に刻まれているのは、家族の誰もが父に対して口を聞きにくい雰囲気の中、薄暗くなった部屋でなんとなくどんよりと将来なんてないんだよ…的な言葉がポツリポツリとかわされていた。そんな幼少期の体験をもう二度としたくない、これから自分にできるかもしれない家族に味あわせたくないと思うのは人として当然だろう。

本当は会社の代表になることとは関係がない話なのだが、この時点の私の中の「法人設立」は、完全にブロックとして立ちはだかっていた。

 

一方で、法人設立に想い悩む私は、自分との対話を進める。

この時、人生で何度か登場してきている「自分」が話しかけてくる。

 

「この選択は重要だぞ。お前の薄っぺらい経験値で決めるな。何を成し遂げる為に生まれてきたかは分からないが、その使命は、この先(法人設立)にある。逆に聞くが、会社を作らないでお前は何者になるつもりか?」と。

 

この時も心の恩師である岡本太郎氏の本で読んだ言葉が何度も半鐘する。

 

「自分の中に毒を持て」

本のタイトルであるこの言葉。そして

「道端で仏に会ったらどうするのが良いのか?…迷わず仏を殺せ」

※元は臨済宗の開祖・臨済の言葉

これは、新しい事をやる時に、古い自分を自らがぶち壊す。知見や私見や予想を越えて真剣を交わす勢いで未知と対峙する。全てを自らが考える。

私はそのように解釈している。

 

どうしてスティーブ・ジョブズはiPhoneだけじゃなくiPadを作ったんだろう?

ピンチの時こそアクセルを踏み、猛スピードで突き進むマインドが私の中にはある。

そしてやり遂げるだけの意志とビジョン、そうしないといけない理由がモチベーションをつくり、理屈を超える。

そのマインドが、か弱い可能性の細い糸かもしれない恐れも同時に考える。

そんな自問自答の結果…。

 

計画を立てて事業をスタートさせようとなると、やはりここから先は個人では無理だと私自身も判断し、

私が代表で、Hを役員に据える前提で会社を設立する事を決意する。そう決めてからは幼少の頃の自分が戻ってきた。作りたい事を目の前に、それに必要な知識を吸収する。

Hも、それをずっと待ってくれていたようだった。これから、報いたいと思う。

 

偉人との会話を一旦辞めて会社法、税務、労務管理等、足りない知識の学習に注力した。

同時に、このサービスに必要な情報がWebやアプリ上でどのように表示され、ユーザーの使い勝手は どのようであれば良いのかといった 今のFIELD AiD SCOREBOOK  の基礎となるような、画面設計を始めとする企画設計を練り上げた。

 

2011年3月3日、合同会社クラウドプロダクションの誕生である。

 

社名の由来は、変幻自在でどのような形であっても「雲」として堂々と在り続けたい。そんな想いから名付けた。

何も先が読めない時代だと言われるが、歴史はいつだってそうだった。

だったら、堂々と変化の代名詞を名乗ろう。

作られた変化ではなく、変化そのものであることを恥じず、諦めず堂々といる。

設立当初のおおよその事業の方向性と役割確認の説明を終え、Hの言葉が今でも忘れない。

 

「一蓮托生でやっていこう。」

 

お互い、固く決意して臨んだ法人設立…のはずだった。

 

この時、既に決別へのカウントダウンが始まった事など、知る由もなかった…。

〈この続きは明日以降また〉

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